歯科心身症
舌痛症(Burning Mouth Syndrome)
- 器質的原因が特定できない舌・口腔粘膜の慢性灼熱痛。
- 移動性、日内変動性–(朝<夕方)
- 「やけどの後のような」「歯がこすれるような」
- 食事・睡眠の障害なし
- 口腔乾燥・味覚障害
非定型歯痛(Atypical Odontalgia)
- 原因不明の慢性持続性の歯や歯肉の痛み(抜歯部位も含む)
- 温度や咬合圧に影響されない
- しばしば移動性–反対側まで
- 歯科治療は無効
咬合違和感症候群(Phantom Bite Syndrome)
- 咬合に関する強い異常感–歯科学的に説明のつかない–何度調整しても解消しない
- 歯科医師が異常を見出せない、もしくは過剰な咬合調整
- 全身的不定愁訴–(頭重感、めまい、肩こり、腰痛、倦怠感etc.)
口腔セネストパチー(Oral cenesthopathy)
口腔領域の体感異常→「体内感覚の変質」
「ネバネバ・ベタベタした・・・」
「唾液が溢れてくる・・・」
「コイルや針金が・・・」「泡」
「ひっぱられ、しめつけ・・・」
「何とも表現しにくい不快感」「異物感」
精神疾患との関連
各歯科心身症の精神疾患合併率
- 舌痛症:49.2%(Takenoshita, 2010)
- 非定型歯痛:46%(Miura、2018)
- 咬合違和感症候群:48.5% (Watanabe,2015)
- 口腔セネストパチー:62% (Umezaki,2018)
•統合失調症など、明確な“精神病”は、5-20%
ほとんどは「身体症状症」レベル
- 結局は「神経症」「心身症」
- High function & middle or upper class
- 薬を飲まない、飲めない(低い忍容性)–BZのみでfollow
- 種々の医療機関を転々–Wanderingの繰り返し–歯の処置で悪化・症状拡大
内科や整形外科では取り合ってもらえない!
➡ 「歯のせいだ!」
「この歯を治せば!!」
必死の歯科治療要求
- 「この歯のここのところが…」
- 「この歯をちょっと削ってくれたら良くなると思うんです」
患者なりの解決法の模索?
そもそも歯科治療の目標とは
- 痛くない
- 噛める
- きれい
・・な歯にするために
=技術偏重では無理!!(主観が排せない)
●やってはダメなこと
•「心因性」という決めつけ
•主訴の改善に結びつかない不可逆的・侵襲的処置
歯科心身症の治療戦略
•舌痛症:67.9%(Kato, 2011)
•非定型歯痛:65.9% (Tu TTH, 2019)
•咬合違和感症候群:44.6% (Watanabe,2015)
•口腔セネストパチー:36% (Umezaki, 2018)
歯科処置の繰り返しで症状がさらに拡大・
固定・増悪し、ますます難治化して状態
➡①歯科治療の制限
➡必要に応じて②抗うつ薬など
➡認知の修正
”ゆがんだ口腔感覚”の修正
➡高次中枢の安定
➡歯科治療の遂行
舌痛症の見極めのコツ
- 長い経過(3カ月以上)
- 食事中は痛まない(和らぐ)
- 左も右もヒリヒリ(神経走行を越えて)
- 午後に悪化
- 元気そうに見える
より「心身症」っぽい症状
•長い、波状の経過
•説明がつかない症状
•不眠を伴う
対して、器質的疾患っぽい症状
•急激な発症
•経験的にありそうな症状
•再現性の高い症状
•解剖学的に合理的(説明がつく)
見落としは厳禁!
- 長く経過を見ることで初めて見えて来るものがある
- 大学病院では年1名程度(1/400-500)に口腔がん–粘膜病変の観察–リンパ節・口底部の触診は必須
- 連携先の確保(病院歯科・大学病院など)
精神疾患合併例の歯科矯正治療
- 矯正開始後の心身両面の不調–気分不良、体調不良、精神的不調など
- 定期的通院困難→治療期間の延長・遷延
- 咬合の変化に不適応–違和感の持続(馴染めない)–容貌への不満足→いつまでも終了しない
- 指示を守れない→後戻りのリスク↑
始めてからの「困った」の回避
- 歯列不整と精神疾患の合併(発達障害含む)
- 事前の精神科受診歴チェック→対診
- 事前の「合同カンファ」–精神科の情報を基に、歯科処置の適応・リスク検討
- 「病院としての」治療方針提示
- 同意取得
治療中における注意点
3つの「押し付けない」
①病名
②処方(処置)
③転科
「とりあえず」の処置はしない!
- 何もしないほうがマシ
- 治療関係ができてから
- つい医療側が焦りがちになることに注意!–「なんとかしなきゃ・・・」–そう言う気分にさせられるところに「患者の病理」
- 採算性を考えすぎない
うつの時の歯科処置は要注意
- うつ病の急性期に歯科処置を受けると、セネストパチー発症のリスクが高まる。
- 歯科治療時の精神症状の把握と、どうしても必要な際のインフォームドコンセントが重要
処置の目的と「勝ち目」が一致するか?
- –してはいけない
- –しないほうがよい
- –したほうがよい
- –すべき

