
足立区の糖尿病罹患者への取り組み
足立区民の課題は以下のものだそうです。
- 健康寿命が都の平均より1.7歳程低い
- 一人当たりの糖尿病医療費が23区でワースト7位
- 糖尿病の未治療者が3割存在
- 40歳前の糖尿病の要指導対象者が増加傾向
①健康寿命を上げる戦略
足立区では、『あだちべジライフ』を開始し、野菜から食べる環境づくりを奨励しております。健康寿命を上げるには、まず糖尿病を予防することが効果的のようです。区民の野菜摂取量が一日当たり100g以上少ないのが実態のようです。

②糖尿病対策アクションプラン
足立区では『健康あだち21』第三次行動計画として、R6年からR17年度にかけて糖尿病対策アクションプランをすすめていきます。特に働き世代の健康づくりに焦点を合わせました。
H24年度では都内ワースト1位だった一人当たり糖尿病医療費がR4年度においては都内ワースト7番まで改善しているものの、いまだに糖尿病未治療者が3割もいらっしゃる事はなんとかしていかないといけません。また、40歳前の糖尿病要指導対象者がH27年度男性20%女性10%→R4年度男性40%女性27%と増加しております。より若い世代のHbA1cを下げていこうという戦略になります。
そのために内科医・歯科医・薬剤師が連携して重症化予防をしていくために今回新しく導入されるのが医科歯科連携チケットです。

③歯科健診チケット(無料)の配布
対象となる方は、64歳以下でHbA1cが6.5%以上の方です。
内科(協力医療機関)にて『歯科検診チケット』を配布されますので、当院に持参していただければ無料にて歯科健診を実施し、結果を記載いたします。それを再び配布された内科の先生にお渡ししていただくと、歯科の詳細なデータがかかりつけの内科の先生に認知して頂けますので、より丁寧な管理を行っていく一助となり、糖尿病の改善が図れるというわけです。
糖尿病と歯周病は強固な相関関係にあることがエビデンスで実証されてきていますので、ぜひこの取り組みを利用していただき、健康な生活を送っていただきたいと思います。
歯周病と糖尿病・慢性腎疾患の関連
糖尿病と歯周病の関係
糖尿病は末梢の血管の形態異常を起こします。口腔内の血管は体の末梢に当たるので、もろに影響を受けることになります。
HbA1cが7.0以上の方は歯周病の重症リスク分類で最高ランクに位置し、1日に10本以上タバコを吸う方と同じリスクとなります。
歯周病の全身への影響としては、歯周ポケットの炎症がサイトカインを産生し、血流に乗り肝臓へ到達し、全身レベルの炎症へと発展します。全身の炎症の数値である血清CRPの数値も上昇します。
これまでに分かっているのは、歯周治療により血清CRPの数値が減少する。つまり全身の炎症も減少することに繋がるのです。そもそも、歯周病の中等度の状態にあるという事は名刺サイズの潰瘍があると同じ事です。そこから新たな感染が繰り返されてしまう状態となっているのです。
血糖管理のデータとしては、HbA1cが1%下がるごとに心筋梗塞が17%減少する。また、HbA1cが0.2%下がるごとに死亡率が10%ごと下がるという事です。
そこで歯周病基本治療を行うと3カ月で0.3%の低下効果をうむとのことです。具体的に言うとこれは、週に2,3回計150分の運動を続けることに匹敵するようです。
慢性腎疾患と歯周病の関係
人工透析患者の口腔環境は、唾液量の減少や自己管理能力の低下、歯科への受診控えも重なり悪化します。歯周炎56%、う蝕歯2.6本、無歯顎20%になるというデータがあります。
そもそも人工透析患者の死亡率は10%で、その死亡原因としては脳血管疾患が3割、感染症が2割という事です。
いずれも歯周病との関係が直接的と言われている疾患です。
また人工透析患者において口腔清掃状態が特に悪い方は、3年後に死亡する確率が3倍になるという恐ろしいデータがあるようです。(Mizutani,Mikami et al,SCi Rep,2020)
つまりプラークコントロールを改善することにより生存率を改善できる可能性があるという事だそうです。私は自らブラッシングの仕方の説明をすることが使命だと自覚していますので、これはやりがいのある事だと思いました。
また、人工透析を行っている中でも適切に歯科受診している方々は、脳梗塞・心疾患や感染症という致命的な合併症の発生を抑制し、生命予後の改善に有用であるという事も日本のレセプトデータから分かっているようです。
歯周病でグラグラしている歯は痛みがなくても根の先まで細菌が侵入している可能性が高く非常に危険です。無理に残したとしても全身的な健康の維持には全く逆効果であるという事を何回でも伝えていきたいと強く思います。

