全員にオススメできる歯ブラシはありません!
千差万別、人それぞれの要因があります。
- 健康意識
- かけられる時間
- 手の器用さ
- 歯ブラシ圧の傾向
- しみやすいか(知覚過敏)
- 歯肉の薄さ
- むし歯タイプ・歯周病タイプ
- 歯の並び具合
- 歯間の形態
- 舌・頬の厚み
- 嘔吐反射の有無
◦現代人はネットに常時繋がってしまったため忙しいです。また、介護・育児・仕事に追われてしまうと、歯ブラシにかけられる時間・意識も少なくなると思います。価値観次第となりますので、それも歯ブラシの形状を選ぶ重要な因子となります。
◦手の器用さは重要な因子です。自分のウィークポイントを理解し、重複せず磨けると5分もかからず磨けると思います。若い時に器用に磨けていた方でも、年齢を重ねると手先のコントロール・目の見え方が低下しますので、歯ブラシも変えていく必要があるかもしれません。
4.~6.は圧力の問題で、日本人はエナメル質が薄くまた歯肉が薄い方が多いので、特にブラッシング圧は200g程度に抑えておかないと、自分で自分の体を傷つけることとなります。私が圧について説明する時によくお伝えしている事は、歯ブラシで自分の肌をゴシゴシ擦ったら痛いですよね?ということです。歯肉は一度下がってしまうと基本的に元には戻りません。また、力を入れると毛先が曲がってしまい清掃効率が悪化します、箒と同様です。
◦むし歯の予防には球状の毛先で清掃効率を、歯周病予防には歯と歯肉の境目(歯頚部)への細部到達を重視したテーパー毛が適すると言えます。
8.~11.は個人個人の形態的・器質的な要因となります。1本だけ突出している所はタフトブラシを用いたり、舌・頬が邪魔してアプローチできないならヘッドの厚みが薄いものやワンタフトを使ったり工夫が必要となります。
柄の太さ

◦細いものは、細かく動かすのには非常に適しています。
◦太いものは、握力が弱い方や細かく動かすのが苦手な方には適しています。
ヘッドの大きさ

細かい所への到達性(歯間部・歯頚部)を考えるとヘッドが小さいほうがいいのですが、どうも思った所に当てられない方にはヘッドを大きくした方が歯頚部まで当たる確率が増すので有効かもしれません。ただし大きいヘッドだと歯間部は浮いてしまい当たりずらくなります。
また、ブラッシング時間が取れない方には大きい方が有効と言えます。
毛先の形状

左の球状毛に近いほど清掃効率重視です。
右のスーパーテーパード毛に近いほど細部到達性が高いです。
毛の硬さ(=毛の太さ)
ナイロン毛の場合、毛の硬さは毛が太いという事になります。使った時の感触として硬い、柔らかいとなります。毛が短くても硬く感じます。

清掃効率と細部到達性のバランスを考えて、ふつうの硬さが一般に推奨されています。
植毛の種類

毛の角度を互い違いにしたタイプは、歯間部への到達性をアップするための工夫となります。

これらのヘッドが比較的小さく、先端の植毛の種類や長さ硬さを変えたものは、奥歯の到達性アップや、前歯の裏側の歯頚部を効果的に磨けるような工夫がなされています。
台座の形態

◦方形は前歯の裏側を縦磨きするときに先端やかかと部分を使うと磨きやすいです。しかし、一番奥まで磨こうとすると四角の角が一つ手前の歯に当たった感触で奥まで磨いたと勘違いしてしまいやすく注意が必要です。
◦円形はその欠点を防ぎ、奥まで届く形状です。
◦尖形も同様で、舌・頬で奥まで入れにくく、最後方歯の高さが短い場合に有効です。
毛の配列の差

◦極細毛のみだと平面的な細部到達性は良好になります。歯ブラシ時間を長く取れる方・手先がある程度器用な方に有効です。力を入れてはダメです。
◦複合植毛は、毛先の位置をずらして不揃いに配列することにより、毛と毛の干渉を防ぐことでさらに細部到達性を高めています。
◦段差植毛は、凹凸が歯間部にフィットしやすい形状のため、歯間部に磨き残しが多くて、手があまり器用でない方・歯ブラシの時間が短い方に有効です。
極細毛・スーパーテーパード毛の注意点


◦極細毛は細部到達性が良く、歯周病の方には基本的にオススメなんですが、力を入れすぎなくても先端が摩耗してしまうため、1カ月程度で交換する必要があります。
力を入れすぎずに、細かく、ある程度時間をかけて磨くことが前提となります。
歯を磨く時の力

左のアブフラクションは、くいしばりや歯ぎしりの方に多い特徴があります。その形態は歯ブラシの毛先を同じ軌道に誘導しやすいため、さらなる摩耗を促し、歯肉が周辺で炎症を起こす(フェストゥーン)右のアブレ―ジョンに移行しやすいです。
力やストロークが大きくなるほどそのすり減りは大きくなります。


ブラッシング力のコントロールはなかなか難しいものがあります。
弱くすると、それじゃ磨いた感じがしないんだよねと言われる方も多いいです。
どうしても強く磨きたい方には

◦ヘッドが小さいほど一点に力が集中しやすいので、もし力強く磨きたければヘッドが大きい方がダメージは小さいと言えます。


また、角があるとそこに力が集中しやすくなるため、面取りタイプの方がダメージが少ないと言えます。
歯頚部の当て方

基本的には右のようなバス法にて、歯頚部に斜め45度で小刻みに当てる方法が歯周病には有効です。
しかし、歯間部の奥の方には到達性は悪いので、歯間乳頭部の歯肉の炎症が強い方や歯間部のう蝕予防に効果的な方法は左のチャーターズ法で、真横から上方45度に当てて磨くと有効となります。

歯垢を落とす以外の歯磨きの目的
歯磨きする目的としては、
- 口腔清掃(主に歯垢の除去)
- 歯肉マッサージ
- 歯磨剤の薬効成分(主にフッ化物)の送達
- 感触(磨き心地)を楽しむ

歯ブラシの毛先が届きにくい所にいかにフッ化物を届けられるかが重要となります。そのため、長短のある複合植毛や山切りカットなど段差植毛は局所デリバリーに有効です。


歯ブラシ時間と磨き残しで選択する

ブラッシング時間が取れる・磨き残しが比較的少ない

◦ブラッシング時間を長く取れる・磨き残しが少ない人ほどコンパクトなものとなります。
奥歯への到達性や前歯の裏側へのアプローチを簡易にしたものがG2のコンパクト(バリエーション)を基本的にオススメしています。
ブラッシング時間が取れる・磨き残しが多い

◦ブラッシング時間は取れるけど、どうも磨き残しが多いと言われてしまう方には、極細毛の歯ブラシが適しています。
細かく微振動をするように1本ずつ順番に磨いていく事により、歯頚部や歯間部へのアプローチが可能となります。
ブラッシング時間が取れなく・磨き残しが多め

◦ブラッシング時間があまり取れない方には、毛の種類を複数にし、自然にアプローチしてくれるような構造のもの選びたいです。
中央の細い毛が細部に、側面の短い毛が歯面に当たることにより密着度を高めているのがG4のタフト内複合植毛です。
さらにブラッシング時間が取れない方には、細い毛と太い毛が交互に配列されており、自然と歯間部に当たる構造のG5のタフト間複合植毛が適しています。写真のものは先端が奥歯に当たりやすいようワンタフトのような形状となっています。フッ素の到達を如何にするかが考えられています。
歯ブラシが思うように扱えない・時間も短い

◦歯ブラシの効率を最大限に考えていかなければならないので、比較的大型でガシガシと磨いた時になるべく当たるように山切りにしたものがG6も段差植毛です。
◦あるいは定まりが付かなくとも包むように当たってくれることを期待したG7の大型で幅広のものも有効です。
むし歯になりやすいのか、歯周病になりやすいのかでの選択

ここでも最初に重要になるのはブラッシング時間です。清掃効率を高めるための工夫がなされたものを選択します。
1.歯磨き時間が取れずむし歯になりやすい人は、複合植毛
2.歯磨き時間が取れず歯周病になりやすい人は、大型で幅広あるいは段差植毛
3.歯磨き時間が取れ、歯周病が進んでしまっている人は、極細毛
4.歯磨き時間が取れ、状態が良い人は、コンパクト
年齢別の歯ブラシチョイス

これは歯科衛生士が検診の際に、どのタイプの歯ブラシがその人に適しているかを年代別に分けたものです。
年齢とともに大型・幅広が増えていきます。極細毛も増加しているのはブラッシング時間が取りやすいからです。年齢とともにブラッシングにかけられる時間が増えていきますが、歯周病が進行していく特徴を表しています。
当院でオススメしているもの
これだけ種類があり、人によって適するものが違うのに「この商品がオススメです!」と言えるはずがないのですが・・・
あえて絞って提案している商品をお伝えします。
①ルシェロ歯ブラシ P-20 ピセラ
歯間と歯周ポケットに毛先が入りやすいように極細毛とラウンド毛が配列された複合植毛で段差植毛です。
奥歯への到達性を高めるため、台座は円形で先端はワンタフトのような形状が付いており、私も愛用しています!
毛先が摩耗しやすいため、微振動での当て方と、清掃効率を維持するために頻繁な交換が必要となります。

②Check-Up 歯ブラシ
こちらも複合植毛となっており、さらに台座の厚みが薄いので、奥歯の歯間部への到達がイマイチの方にすすめています。
舌が邪魔してオエッとなってしまう方にも有効です。

③ルシェロ 歯ブラシ B-30 グラッポ
どうも当てられないという方には、大型・幅広のグラッポをおすすめしています。
長短いずれもラウンド毛の段差植毛で、清掃効率に特化しています。
このタイプは一番奥や前歯の裏側が当たりずらくなりやすいですが、その欠点を補うように台座が円形で、先端がワンタフト形状となっています。
舌・頬の緊張が強い方にはあまりおすすめできないので、その場合は電動歯ブラシの選択となります。

電動歯ブラシについて
いかに電動の力を借りようとも、適切に当てられているかが問題となります。基本的に私は感触のフィードバックが得られやすい、手軽な手磨きを推奨しております。ただし介護が必要な方、手が不自由な方、あるいは極端に時短を求める方には有効です。
それでも電動歯ブラシを使いたいという方にはなるべくグレードのいい値段の高い物を使ってほしいと思います。
どこまで磨いたかをアプリで確認できる、今のブラッシング圧を表示してくれる、回転運動に音波振動が加わっている等のタイプが良いと思います。
単純に回転運動のみですと、日本人の歯肉は薄いため、高確率で歯肉退縮・知覚過敏となっている方を見かけます。
音波振動のみですと、どうも磨いた感が得られにくい・くすぐったいという方も多いです。その場合、あえて薬局で市販されているような安価な音波サポート歯ブラシである程度横に動かすという手もありかもしれません。
補助清掃具について
アメリカではCMで「フロスしますか?死にますか?」という広告が出ていたりしました。オーバーとも思えますが、私個人としては好きな表現です。
歯間部中央に対して歯ブラシの毛先ではどうしても到達させることができません。物理的に擦過できるフロスが一番適しています。
扱うのが難しい方にはY字型の奥歯の歯間部に適したホルダー付きのフロスをおすすめしています。
また歯肉が退縮し、歯と歯の間の面積が大きくなってしまった方には歯間ブラシが有効です。その面積に合わせてサイズを決めていただき、なるべく平行に動かして頂きたいです。歯根方向に挿し込んでしまうと、傷つき急性炎症を起こし、大きく腫れる原因となってしまいます。
どうしても傷ついてしまったり、歯根がシミてしまう方にはゴムタイプの歯間ブラシとなりますが、清掃効率はかなり低下します。ウォーターピックもありますが、ネバネバのバイオフィルムを除去するには相当な水の力が必要となります。周りがビシャビシャになるためお風呂に入った時に使うといいでしょう。
最後方歯のさらに裏側へのアプローチにはワンタフトがおすすめです。私も愛用しています!
補助清掃具は一日一回は確実に使っていただきたいです。夜だけでも歯ブラシ前に補助清掃具をなるべく焦らずに・傷つけないよう慎重に使っていただければ、口腔内の細菌は大幅に減少し、歯面がツルツルしていきます。

