がん診療医科歯科連携

全身疾患

がん手術時の口腔衛生の重要性


がんの外科手術時の口腔内感染リスク

手術時や手術後は以下の理由により口腔内汚染が不可避となります。

  • 絶飲食
  • 気管挿管、経鼻挿管
  • 開口固定
  • 無意識状態(嚥下動作なし)

特に大手術や消化管手術ではこれらの状態が持続し汚染度が増します。

術後に「むせ」が無くても、垂れ込んでいる可能性があり、もはや誤嚥は必発と考えるべき

⇒口腔衛生の保持が重要

術後肺炎は口腔健康管理により減少する!

術後肺炎の発症率は1.5~6%と言われており、いったん発症すると入院期間、死亡率が上昇します。

病棟スタッフ・理学療法士による呼吸器リハビリ、クロルヘキシジンによる口腔清掃プログラムにより、病棟での肺炎発症を1/4に減少させることができます。

手術前に歯科医院で出来ること

時間がないのでできることは限られますから、主に応急処置や表面的な感染物除去になります。

  • 縁上歯石の除去、歯面清掃
  • 動揺歯の処置(暫間固定・抜歯・マウスガード作製)
  • う蝕歯の応急処置(感染除去・仮封処置)
  • 義歯の調整

急な処置で慌てないためにも、日ごろから歯科健診を受け、メンテナンス処置も受けておいた方がいいと思います。

抗がん剤治療中のトラブル


抗がん剤治療中の口内炎

抗がん剤治療中の口内炎の発生率は高く、かなり重症なケースもあります。

口内炎の対処法

その他の口内に出現する合併症

  • 歯肉出血
  • 単純ヘルペス感染
  • カンジダ性口内炎
  • 味覚障害
  • 末梢神経障害、歯の知覚過敏様症状
  • 口腔乾燥症

抗がん剤中の歯科治療

歯科治療の原則としては、抗がん剤治療開始前または終了後に施すことが安全と言われます。

投与中では白血球数2000/μL以上(好中球1000)、血小板4~5万/μL以上で観血処置が可能。

抗がん剤中の抜歯

がん主治医の先生と抗がん剤投与のスケジュールを共有し、安全に処置を行えるように注意する必要があります。

血液のがんに対する造血幹細胞移植に伴う口腔トラブル

造血幹細胞移植後は約80%で口内炎が発生します。

そのため移植処置の2週間前までにすべての口腔健康管理が終了している事が望ましいです。

造血幹細胞移植を計画すると同時に歯科受診が必要となります。

粘膜炎が重症感染症のリスクとなったり、痛みにより経口摂取が困難となったりします。

放射線治療による口腔トラブル


口腔に直接照射されるのは頭頚部がんの場合です。

適応症例は、切除可能だが組織温存を希望された場合、切除不能の進行がん、術後ハイリスク症例です。

合併症として多い口腔乾燥症

味覚障害

放射線性う蝕

放射線性顎骨壊死

頭頚部放射線治療による口腔内合併症には急性期と晩期のものがあり、急性期の障害は基本的に可逆的で、症状緩和がメインとなる。晩期の障害は治療に苦渋するものが多く、極力障害を起こさないよう予防・早期発見・即時治療が重要

嚥下障害

約60%で誤嚥を確認され、約10%が誤嚥性肺炎で死亡する。約33%に重篤な嚥下障害が残る。機能訓練をすることにより回復を図る。

頭頚部放射線治療後の歯科治療

歯科医院受診の際の確認すべきこと

  • 放射線が当たった範囲(照射野)
  • 放射線が当たった量(照射量)
  • 放射線治療を行った時期
  • 原病の状態(治癒?担癌状態?)

がん治療中の薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の予防と治療


がん治療時のMRONJとは

固形がん(乳がん・前立腺がん・肺がん・甲状腺がん・腎がん)の骨転移や多発性骨髄腫骨関連事象の予防・軽減あるいは高カルシウム血症に対する治療として骨代謝修飾薬(BP)は使われます。作用機序は以下の通りです。非常に有用なお薬ですが、副作用として重篤なのがMROJで、骨粗鬆の際の発症率の10倍ががん治療の時に出現します。

MRONJは以下の3項目の診断基準を満たした時に診断されます。(AAOMS)

  • 現在あるいは過去に骨吸収抑制薬か血管新生阻害薬による治療歴がある
  • 顎骨への放射線照射歴がなく、骨病変が顎骨へのがん転移でない
  • 医療従事者が指摘してから8週間以上持続して、口腔・顎・顔面領域に骨露出を認めるか、または口腔内・外の瘻孔からプローブなどで触知される骨を8週間以上認める

MRONJへの基本的歯科対応

1.リスクの可及的除去

-BMAや血管新生阻害薬開始前の歯科受診

-口腔健康管理

2.MRONJの初期での発見・治療

-ステージが上昇すると治療に苦渋

MRONJのリスク因子

MRONJに対する歯科治療の注意点

どうしても歯科治療が必要になった場合

抜歯後の治癒遅延

  • まず4週間は慎重に経過観察
  • 骨露出が8週間以上続く場合
  • 骨露出が無くても、オトガイ部の知覚異常や口腔内瘻孔、深いポケット、単純X線写真で軽度の骨溶解を認めた場合

専門的治療を要する

特にがんの骨転移ステロイド併用などのリスク患者は要注意

MRONJ自体の治療

抗菌薬投与について

・抗菌薬の選択

-第一選択はペニシリンやセフェム系抗菌薬

-ペニシリンアレルギーの場合

 ニューキノロン・メトロニダゾール・クリンダマイシン・ドキシサイクリン・エリスロマイシン

・治療期間

-長期間とされるが、具体的な期間は不明

AAOMS(米国口腔顎顔面外科学会)、顎骨壊死検討委員会のポジションペーパーより

がん医療における緩和ケアと口腔健康管理


緩和ケアとは

がん患者は様々な苦痛を感じる

緩和ケアの実例

緩和ケア時の口腔トラブル

やはり多い口腔乾燥

緩和ケアでの口腔健康管理で気を付けること

・苦痛を与えない

-あくまでケアであり、キュアでない

-鎮痛には最大限の配慮を

‐時間をかけすぎず、回数をかけてケア

・負担をかけない

‐口腔衛生管理は家族や介護者のサポートが必要

-患者本人や家族の負担にならないよう、口腔健康管理の計画は現実的な内容と回数で